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神戸地方裁判所 昭和57年(行ウ)21号 判決 1983年9月26日

原告

浜口正人

被告

神戸市長

宮崎辰雄

右訴訟代理人

奥村孝

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実《省略》

理由

一本件訴えの適否について

1  本件訴えは、原告において、神戸市職員退職手当金条例(昭和二四年九月一日神戸市条例第一四七号)一〇条及び同条の二が退職手当金の加算支給額の基準を「別に定めるところにより、前三条によつて算出した金額にその一割相当額以内」及び「予算の範囲内で増額して」としていることが地方自治法二〇四条三項に定める給与条例主義に違反するとして、これらの規定に基づく退職手当金の加算支給行為の差止めを求めるものである。

2  ところが、本件訴え提起後、同条例一〇条及び同条の二の各規定が神戸市職員退職手当金及び神戸市職員に対する期末手当等の支給に関する条例の一部を改正する条例(昭和五七年一〇月一三日神戸市条例第三八号)一条によつて削除されたことは、当事者間に争いがない。

3  もつとも、右附則二項では、右改正後の退職手当金条例の規定は、昭和五八年一月一日以後に退職し、又は死亡した者に係る退職手当について適用し、同日より前に退職し、又は死亡した者に係る手当については、なお従前の例による旨、また同附則三項では、同日から昭和六一年三月三一日までの期間内に退職し、又は死亡した者に係る手当については、右改正前の退職手当金条例がなおその効力を有する旨それぞれ定められていることが認められる。

しかし、昭和五八年一月一日以前に退職又は死亡した神戸市職員で今日に至るもなお退職金が未払いとなつているものが存在しないことは当事者間に争いがない。そして、前記附則四項では、「前項の規定によりなおその効力を有することとされる改正前の条例第一〇条及び第一〇条の二の規定の適用については、改正前の条例第一〇条中「別に定めるところにより、前三条によつて算出した金額にその一割相当額以内」とあるのは「その者の給料月額にその者の勤続期間を神戸市職員退職手当金条例及び神戸市職員に対する期末手当等の支給に関する条例の一部を改正する条例(昭和五七年一〇月条例第三八号)附則別表第一に掲げる期間に区分して、当該区分に応じた割合を乗じて得た額の合計額(その額が給料月額に六を乗じて得た額を超えるときは、その乗じて得た額)」とし、改正前の条例第一〇条の二中「予算の範囲内で増額して」とあるのは「その者の給料月額にその者の勤続期間に応じ神戸市職員退職手当金条例及び神戸市職員に対する期末手当等の支給に関する条例の一部を改正する条例(昭和五七年一〇月条例第三八号)附則別表第二に掲げる割合を乗じて得た額を加算して」とする。」旨定めている。

すなわち、これらの規定及び前記当事者間に争いのない事実によれば、退職手当金の加算支給額は条例により具体的に定められており、今後原告において給与条例主義違反があると主張する改正前の神戸市退職手当金条例一〇条及び同条の二に基づく一〇条要綱及び一〇条の二要綱による退職手当の加算支給が行われる余地はなくなつたものといわなければならない。

4  従つて、本件訴えは、差止めを求めるべき対象が消滅したことにより、訴えの利益を欠くに至つたものというべきである。<以下、省略>

(村上博巳 笠井昇 田中敦)

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